ヘルスケアミーティング2011-治療医学の方法論を超えて|2011年活動報告

武蔵小金井の歯医者は沼澤デンタルクリニック|インプラント/審美セラミック歯科/歯列矯正/無痛虫歯治療

活動報告2011

「ヘルスケアミーティング2011 治療医学の方法論を超えて」に参加

2011/10/09-10

2011年10月9日、10日に日本ヘルスケア歯科学会が主催する「ヘルスケアミーティング2011 治療医学の方法論を超えて」に参加してきました。

1日目は歯科衛生士が主体のセミナーに出席しました。メインテーマは「Heart to Heart いちばんたいせつなこと」前半は歯科衛生士としてのスキルについて、後半は患者さんとの心のつながりについて勉強しました。

スキルについてはまずPMTCの講演が始まりました。PMTCの目的と意味を明確にするため、スウェーデンの30年にわたる予防プログラムの研究がとりあげられました。メインテナンスを受ける、受けないによって喪失する歯数は大きく変わり、正しい予防プログラム、正しいPMTCを行う必要があるのだとわかりました。PMTCは研磨とイコールであると漠然と考えていた私は、リスク部位にのみPMTCをすることで予防としての役割を充分に果たすのだということに気付きもせず行っていました。PMTCは、ただの研磨ではなく、大事な予防プログラムの一部であり、必ずしも全顎に行うべきものではないということを改めて理解することができました。

次は口腔内写真についての講演です。ただ資料として集めるものではなく、撮った口腔内写真をどのように活用すべきか、活用するためにはいかに的確に撮影すべきかを知ることができました。私は日々口腔内写真を撮っていますが、その写真を使ってうまく説明に活かすことができずにいました。そのため、写真を撮る意味をしっかりと理解せず、規格から大きくはずれた写真を撮ってもそれほど深くは悩んでいませんでした。ごめんなさい・・・。ですが講演の中で、例えばP検後の説明として、すぐにポケットの深さの話をするよりも、まず口腔内写真を患者さんと一緒に見ながら歯垢の部位を確認し、歯石の話→歯肉の腫脹→ポケットの形成→歯周病の説明。というような話の流れをつくったほうが、目で見ることができるぶん、その患者さんの自分の口腔内に対する現状理解度が何倍も高まることがわかりました。私たち歯科衛生士の一番難しい仕事といってもいい、患者さんの行動変容を促すのに、これほど効果的なアイテムとして重宝すべき口腔内写真を軽い気持ちで撮っていたことに、深く反省しました。これからは、自分と患者さん、さらに歯科医師をつなぐ、大事なツールとして使うべく、規格通りの写真を撮れるよう、さらに努力していくつもりです。

続いて、心のつながりについての講演では、3人の歯科衛生士が実際の体験とともに、どのような患者さんと出会い、コミュニケーションをとっているのか聞くことができました。苦手な患者さんとどのように距離を縮めていったのか、メインテナンスに長く通うようにどんな努力をしたのか・・・さまざまなお話がありました。私たちは患者さんと長くお付き合いをしていく仕事なので、どんな方とも上手にコミュニケーションをとる必要があること、そしてそれは歯科衛生士として必須事項なのだと理解することができました。3人の講演内容に共通していたのは、私たちの言葉で患者さんの行動を変えるよう促すことは治療上必要なことでもあるわけですが、逆に、患者さんの一言で私たちの何かが変わるという事実があることでした。「ありがとう」「どうやって歯磨きするか教えて」「あなただから通院が続いた」「また来ます」患者さんからの信頼を勝ち得るのは非常に難しいですが、それを得た時は大きな喜びと自信に繋がるのだと思います。

2日目は歯科医師や歯科衛生士がともに同じ会場でセミナーに参加しました。午前中は学会代表である杉山先生の講演と日本歯科医師会会長、大久保先生の講演を聞き、午後からはサブカルテの活用法について、いくつかの講演を聞きました。

杉山先生の講演は、メインテナンスについてや、海外と日本の口腔保健の違いなどをとりあげていました。面白かったのは、メインテナンスに通われている患者さんに実際インタビューし、直接患者さんの意見を聞いていたところです。インタビューは録画し、講演すること説明したうえで理解を得た方に出演していただいたそうです。メインテナンスに6歳のころから17歳の現在まで通っている女の子は、ステインが少し付着しただけでも、定期健診まだかな、思ってしまうと話しており、その患者さんの母親は、杉山先生の医院のことを「命の恩人」とまで発言していました。これには先生自身、非常に驚いたと同時に嬉しかったと、おっしゃっていました。メインテナンスに幼いころから通う習慣があれば、口腔内に対する関心が非常に高くなるということがわかりました。メインテナンスに通うことを促すことで、予防の意識が高まる人が多くなる事実を再確認し、私も努力しなければいけないと思いました。

大久保先生の講演は、口腔の健康と、全身の健康、さらには人生の充実と幅広い内容でした。印象的だったのは、口腔内というのは他の臓器とは違い、将来の自分をイメージできるからだの一部であるということでした。現在当院でも8020運動推進の真最中ですが、例えば20歳の人に60年後のあなたの胃はどうなっていると思いますか?と質問してもはっきりとしたイメージはもてないはずです。ですが、同じようにして口腔内を想像すると、歯がないかも、とか入れ歯かも、といったように、誰でも容易にイメージできるのです。つまり逆をいえば、こうでありたい、とも思うことができるということでした。それを支援し、健康を継続させ、高齢になっても自立した生活習慣をおくることができるよう、歯科医師、歯科衛生士が日々目の前の現実を受け入れ、個人の将来を見越した治療をしなければいけないということを自覚しました。そこまで自分ができるのか、正直まだわかりません。ただ私たちの仕事は、人の生涯に深くかかわる仕事であり、その責任の重さを深く感じ、同時にこれをやりがいに感じることができるような歯科衛生士にならなければいけないのだと思いました。

2日目午後のディスカッションは、日々診療に使っているサブカルテ、その活用法についての4人の先生や歯科衛生士の講演でした。講演を聞いた直後の私の感想としては、今までサブカルテには、歯肉、ポケット、出血などの見た目や検査結果、患者さんの訴え、そのひとの人柄や生活習慣は必要に応じて記載しているものの、根形態や骨形態までは書いていなかったので、そのような細かいところまで記録する必要があるのだと驚きました。そして、それらを記載するためには高い技術と幅広い知識が必要であることを理解しました。また、診療録と業務記録は、何かあった時に行政に提出を求められるものなので、サブカルテとは別物として、そちらも正しく記載しなければならないということも初めて知ったので驚きました。そのような事実は聞いたことも考えたこともなかったので本当に新しい発見でした。

私にはまだまだ知らないことが多く日々経験と努力と勉強が必要です。さらにそれを思い知ったのは、二日目の質疑応答の時間、大久保先生に「歯科衛生士の業務範囲は法律で限られており、いったいどこまでできるものなのか」というような質問をした先生がいました。その質問に対して大久保先生は、法律に縛られるのではなく、まず歯科衛生士自信の実力が高くなければ、一歩踏み越えた治療に堂々と参加させることはできないのではないかとおっしゃっていました。それを聞いた時はハッとした思いでした。自分には知識も技術も足りないことがたくさんあります。それらを埋めるために沼澤デンタルクリニックで日々歯科衛生士として診療に加わり、勉強しています。今までは、自分には何が必要で、何が足りないのか、何をすべきなのかわからずにいましたが、今回この学会に参加することで、少しずつそれがわかってきた気がします。このような勉強会に参加しなければ気付かずにいたことや知らなかったことを知識として増やせるのはすごく嬉しいです。この2日間の内容をフィードバックし、成長して、少しでも患者さんの役に立てる歯科衛生士になれるよう頑張りたいと思います。

Written by 松本愛(歯科衛生士)

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